研究概要 |
本研究は,高度情報化社会を支える基盤技術であるシリコンデバイスプロセスにおいて重要な位置を占める液相系(ウェット)プロセスにおけるシリコン表面化学反応について,液相中の反応種の存在状態やシリコン表面の電気化学的および物理的/化学的性質の原子レベルからのキャラクタライゼーションを行い,これらの関与する反応を素過程レベルで解明すると同時に,得られた知見を基に新規デバイスプロセスを設計するための方法論を確立することを目的としている. 第一年目である本年度は,まず極微量の金属イオン種を含むフッ酸系溶液中に浸せきしたウェハ表面への自発的金属析出過程を中心に,種々の見地から詳細な検討を加えた. 従来の研究で,ウェハ表面に存在する微小な欠陥部位において優先的な金属析出が認められることが明らかとなっているが,今回,走査プローブ顕微鏡技術を応用した電気力顕微鏡(EFM)を用いてウェハ表面の詳細な解析を進めた結果,欠陥部位は局所的に電位が卑(カソード側)にシフトしていることが明らかとなった.これは,このようなサイトが,金属析出に対し高い活性を有しているということを示している. さらに,複数の金属イオン種が同時に存在する系における析出挙動について,原子間力顕微鏡(AFM),走査電子顕微鏡(SEM),プラズマ発光分光分析(ICP),また電気化学的分極測定などを用いて検討した結果,Cuの共存がFeやNiの析出を促進する,という結果が得られた.これは,熱力学的には予測されるが実際の確認されたことは従来無く,本研究の大きな成果の一つと言える.さらにこのような析出促進効果に対し,溶存酸素や光照射の影響があることも予備的に確認出来たので,次年度はこの点についても系統的な検討を進める予定である.
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