本研究において、本年度はLa_<0.6>Sr_<0.4>MnO_3(LSMO)の低磁場における磁気抵抗効果を増大させる目的で、LSMO/Cr_2O_3(反強磁性絶縁体)の積層構造を作製し、その電気・磁気・磁気抵抗特性を調べた。LSMO、Cr_2O_3はSrTiO_3(111)基板上でそれぞれ(111)、(0001)配向する。薄膜面内でのスピン配列は、LSMOは強磁性的、Cr_2O_3は反強磁性的になっている。つまり界面においてMn-Cr間に超交換相互作用が働くと、それぞれがバルク内部でのスピン配列を保てなくなり、スピン配列にフラストレーションが発生する。磁場が無い状態ではLSMOのスピン配列がフラストレーションによって乱れ、二重交換相互作用を抑制して抵抗が増加し、磁場を印加するとLSMO内のスピンは磁場に平行にそろうために二重交換相互作用が有効に働いて抵抗が減少することが期待できる。 レーザアブレーション法によってSrTiO_3(111)基板上にLSMO/Cr_2O_3二層薄膜を作製した。温度300Kにおいて±8kOeの範囲で磁場を変化させた際の、低磁場における磁気抵抗効果は、500Oeで約1.5%と、LSMO単層薄膜(500Oeで約0.5%)に比べ、磁気抵抗効果が非常に大きくなった。磁化測定の結果から、残留磁化が大幅に減少していること、磁化が飽和ために必要な磁場が増加しており、M-Hヒステリシスの角形比が小さくなっていることから、磁気抵抗効果の増大が無磁場状態でのスピン配列の乱れに起因していることが示唆された。
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