繊維強化複合材料の力学物性は、構成要素の力学物性に加えて繊維の分散状態に強く依存する。したがって、繊維強化複合材料中の繊維配向度の測定は、繊維強化複合材料の力学物性を予測する上で不可欠な技術である。ところで、繊維形状の磁性体の場合、形状磁気異方性が支配的となる。繊維形状の磁気トルク曲線L_<fiber>はL_<fiber>=Ksin2θと表すことができる。ここで、Kは定数であり、繊維形状の場合Nが1/3以下になるため負の値をとる。したがって、強磁性体繊維強化複合材料の磁気トルク曲線L_<comp>は L_<comp>=(Σn_φ)/(N_<total>)Ksin2(θ+φ) となる。ここで、n_φは配向角φ_iを有する繊維の本数、N_<total>は全繊維の本数である。 5種類の異なる配向度を有する繊維強化複合材料の磁気トルク曲線をコンピュータシミュレーションによって求めたところ、180度周期のサイン曲線となっており、配向度が大きくなるに従い振幅も大きくなっていることがわかった。従って、配向度決定のためには磁気トルク曲線を180度に渡って測定する必要はなく、最大振幅の45度あるいは135度における値を求めれば良い。そこで、次に最大振幅を示すθ=135度における磁気トルクとヘルマンの配向度と関係を導く。φ_i度基準方向からずれた繊維の場合、トルク曲線L_<ith>は L_<ith>=Ksin2(θ+φ_i)=K(sin2θcos2φ_i+cos2θsin2φ_i) となる。ここで、θ=135度を代入すると L_<ith>(atθ=135)=-Kcos2φ_i=-K(2cos^2φ_i-1) となる。したがって、種々の配向角を有する複合材料のθ=135度における磁気トルクの値L_<comp>(atθ:135)は L_<comp>(atθ=135)=-K(<2cos^2φ>-1)となる。ゆえに、最大振幅を示すθ=135度における磁気トルクを定数-Kで除すれば、直接ヘルマンの配向度が求められる。
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