研究概要 |
繊維強化複合材料の力学物性は、構成要素の力学物性に加えて繊維の分散状態に強く依存する。したがって、繊維強化複合材料中の繊維配向度の測定は、繊維強化複合材料の力学物性を予測する上で不可欠な技術である。ところで、繊維形状の磁性体の場合、形状磁気異方性が支配的となる。昨年度の研究により、配向角φ_iを有する繊維の本数がn_φ、全繊維の本数がN_<total>であるとき、強磁性体繊維強化複合材料の磁気トルク曲線L_<comp>は L_<comp>=(Σn_φ)/(N_<total>)Ksin2(θ+φ) となり、種々の配向角を有する複合材料のθ=135度における磁気トルクの値L_<comp>(atθ=135)は-K(<2cos^2φ>-1)となることが分かった。すなわち、最大振幅を示すθ=135度における磁気トルクを定数-Kで除すれば、直接ヘルマンの配向度が求められることを見出した。 そこで本年度は,この理論をもとに評価装置の開発を行った。現有の水冷式電磁石と購入した安定化電源とを接続した。これにひずみゲージを用いたトルク検出器を設置し、磁気トルク測定による評価装置を作製した。直径0.2mm、長さ2mmの鉄繊維を配向度fp=1,0.75,0.5,0.25,0となるように並べた繊維強化複合材料試料を作製し、これを前述の評価装置に取り付けた。一定磁場中で試料を回転させ、それぞれの角度でのひずみゲージの出力電圧の検出を行った。 横軸に回転角、縦軸に出力電圧とし、測定結果をプロットした結果、各試料の出力電圧は180度周期のサイン波になっており、また、その振幅は配向度fpの増加にともない大きくなっていた。このように、実験曲線と理論曲線とは一致していた。また、規格化した出力電圧とヘルマンの配向度とには線形的関係が見出され、出力電圧と配向度の関係は1対1対応になっていた。このことから作製した評価装置により繊維強化複合材料における繊維配向度の評価が可能になった。
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