短繊維強化材料の成形過程における短繊維の配向状態を実験で調べた。強化材料中の繊維は、濃厚であれば繊維を可視化することは困難である。そこで本研究では、繊維の持つ複屈折を利用した、濃厚系でも繊維を可視化できる新しい手法を開発し、短繊維濃厚系における短繊維の運動を明瞭に観察できた。 流路は、薄肉成形品を想定して、厚さ2mmの急拡大スリット流路を用いた。この流路中を流れる濃厚系繊維分散流体の配向は、繊維濃厚系と希薄系とで大きく異なった。濃厚系では急拡大部通過後、繊維が流れ方向と直行方向に急激に配向し、下流に流れるに従ってゆっくりと流れ方向に配向していった。一方繊維希薄系では急拡大部通過後、いったん繊維の配向は乱れるものの、下流に流れるに従ってすばやく流れ方向に配向した。一般に急拡大部においては繊維は流れと直行すると方向に配向しようとするが、濃厚系では繊維間干渉が大きいために、一部の繊維が流れと直行方向に配向しようとしたとき、多くの繊維が流れと直行方向に配向したものと考えられる。しかし希薄系では繊維が単独で運動するためにこのような傾向は小さい。また、マトリクスが粘弾性を有するときの繊維の配向について調べた。このとき配向は濃厚系・希薄系とにかかわらず、流れと直行する方向に急激に配向し、希薄系では下流部でもその配向を維持した。これはマトリクスの持つ弾性の影響であると考えられる。しかし濃厚系では、マトリクスの弾性よりも繊維間干渉のほうが配向に与える影響の大きいことがわかった。 同じ形状の流路で繊維配向の数値解析を行った。その結果、実験とほぼ同様の配向状態の結果を得た。本計算では、繊維間干渉のみを考慮し、マトリクスの弾性的性質は考慮しなかったが、繊維間干渉を考慮するだけで、妥当な計算結果を得ることができた。
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