研究概要 |
現在製品化されている強誘電性液晶ディスプレイは数100万個の液晶素子それぞれにサージ機能を付与するためにコストが大きくなる欠点を有しているため、サージ素子としてバリスタ薄膜を用いる提言が成されている。これに要求される特性は酸化亜鉛バリスタ薄膜材料が実現に一番近い材料と考えられる。この薄膜の構造を制御し、多層化によりバリスタ電圧を制御し、各層の組成の最適化を計ることにより低抵抗化することが期待できる。本研究はZnO/Pr6O11多層膜を作製し、要求を満たす特性を有する酸化亜鉛バリスタ薄膜を開発することを目的とし、本年度は成膜プロセスにおける酸素ガス圧制御が抵抗、膜構造および相の安定性を左右することから、酸素ガス圧条件を詳細に検討し最適化を計り、また多層化させることによりバリスタ電圧を制御し、また実用化要求である膜厚200nm以下の構造を検討し、以下の結果を得た。 レーザーアブレーション法を用いてZnOとPr_6O_<11>薄膜の膜厚を変化させて作成したZnO/Pr_6O_<11>積層薄膜は、いずれも明瞭なバリスタ特性を示し、そのバリスタ電圧Vbは0.15〜0.30、非線形係数αは2.5〜4.3の値を示し、低電圧バリスタとなることが判明した。さらに膜厚を[ZnO/Pr_6O_<11>]=250Å/250Åとした薄膜試料においてもバリスタ特性を示すことが判明した。 膜厚の変化とバリスタ特性(Vb,α)の関係について調査したところ、明瞭な相関関係は得られなかったが、膜厚が大きいほど試料全体でVb,αの値が均一で再現性の高い特性を示すことが確認された。
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