研究概要 |
ニッケル基超合金におけるγ母相の組成であるNi-200r単相単結晶を,改良型のブリッジマン法により作成し,その高温クリープ挙動を応力依存性の観点から調査した.なお,クリープ試験は,フルサイズのつば付き試験片を用いており,引張り条件下で行った.引張り方位は,ステレオ三角形内部の方位となるように統一している.本年度までに得られた成果を以下に記す. クリープ曲線の形状に,強い応力依存性が存在することが明らかとなった。すなわち,高応力では,遷移クリープ域におけるクリープ速度の減少比は小さく,最小クリープ速度は多結晶の場合と同程度となる.これに対し,低応力では,遷移クリープ域におけるクリープ速度の減少比が大きくなる.また,遷移域が拡大するため,最小クリープ速度は多結晶と比較して大幅に減少する.応力によって,クリープ曲線の形状が異なる原因を明らかにするために,クリープに伴う組織の発達を,低応力および高応力においてそれぞれ調査した. 低応力では,遷移域においてサブバウンダリーの形成・発達が生じる.そして,加速域において動的再結晶粒の形成が見られるようになり,破断材では,試験片全体で動的再結晶が均一に生じる.これに対し,高応力では,弱化の原因である動的再結晶粒界の形成は,遷移域においてすでに生じる.このため、クリープ速度は、相対的に増加し、遷移域におけるクリープ速度の減少比は小さくなるものと推論した.また,高応力では,動的再結晶粒の形成は試験片中心部で集中的に生じ,組織は不均一になる.
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