研究概要 |
2次元的異方性が比較的小さく,高温度域での磁束線ピンニング特性に優れ,かつ単相も得られ易いYBa_2Cu_3O_7を調査材料とした。同和鉱業(株)製のYBa_2Cu_3O_7粉末(平均粒径3μm)を購入し,現有のフリッチュ製遊星型ボールミルを用いてメカニカルミリング(MM)し,回転速度を一定に保ちながら,粉末質量,MM時間,乾式あるいは混合助材としてエタノールを用いた湿式において粉末粒径1μm以下となる最適なMM条件をX線回折(XRD),密度測定,走査型電子顕微鏡(SEM)にて検討した。X線回折の回折ピーク半価幅から結晶子サイズを算出した結果,湿式MM,粉末質量10g,エタノール量2ml,MM時間5.4ksの条件が最も微細かつ緻密な焼結体を得る事がわかった。またSEM組織観察においても同条件で1〜2μmの均一な粉末粒径が得られる事も見出した。 次にMM付加とMM無付加の焼結体をSQUIDにて磁化測定を行った結果,MM付加した焼結体は超伝導体積率が減少し,超伝導相の割合が減少する傾向にある。これはMMする事により緻密な焼結体となった為,酸素の拡散が妨げられたものと推察される。この点に関しては,圧縮成形加工後に再度,最適な熱処理を施す事により改善出来るものと考えている。 次に,圧縮試験温度T_T=930℃においてMM付加とMM無付加の試験片をε^^・=5×10^<-5>〜10^<-3>s^<-1>の低ひずみ速度範囲でひずみε=50%まで行った結果,MM無付加では変形初期段階において高い変形応力に達し,かつ高温圧縮試験後の試験片外観で大きな破壊割れが生じることがわかった。それに対し,MM付加においては,側面に樽型変形を生じ,特にε^^・=5×10^<-5>s^<-1>ではマクロ的な割れは観察されず,MM効果を明瞭に明らかとした。しかし,ひずみ速度ε^^・=10^<-5>s^<-1>オーダーでは,実用上作業効率等の点から極めて遅いため更なる組織制御の検討を試みる必要があることもわかった。
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