本年度は、Siデバイス用Cu配線材の膜構造を理解するために、現在Cu配線形成の主流となっているめっきCu膜の下地となるスパッタCu薄膜の構造に着目し研究を行った。洗浄されたSi(100)基坂上に、高周波反応性スパッタリング装置でバリア層としてTiNまたはTaN膜を成膜した後100nm厚のCu層を連続成膜した。これらの試料に、フォーミングガス中で200〜600℃の温度域において5分〜数時間アニールを施し、主にX線回析法による構造分析を行った。その結果、熱処理を施した場合(111)配向性の変化に関してはバリア材による違いが大きく、TaN上Cu膜の方が(111)配向性に優れていた。また、バリア材によらず(111)回析ピーク強度の増加が見られたが、これは熱処理に伴う粒成長によるものと考えられる。成膜後室温で保持した試料のシート抵抗およびX線回析ピーク変化を調べたところ、それぞれ抵抗値の減少と(111)ピーク強度の増加が認められた。これはスパッタCu膜でも室温で粒成長が起こっていることを示唆している。これらの実験結果を元に特にスパッタCu膜の室温粒成長挙動と下地の影響に着目し、異なる基板上にCuを成膜し粒成長挙動を比較を試みた。基板はSi_3N_4および岩塩を用い、比較のため成膜直後に岩塩基板を溶解してfree-standing Cu膜も作製した。TEMおよびXPDによる微細構造解析を行った結果Si_3N_4および岩塩上に成膜されたCu薄膜では、室温に保持した場合にも顕著な粒成長が観察されたがfree-standing Cu薄膜では、室温粒成長はみられなかった。これは、Cu薄膜の室温粒成長は成膜時にCu膜に導入される真性応力と密接な関係があることを示唆している。以上の知見を元に来年度は膜応力とCu薄膜の微細構造の関係について断面TEM観察などの方法を用い、さらに詳細な解析・検討を行う予定である。
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