1.MoSi_2のModifiedEAMタイプ原子間ポテンシャルの開発 研究当初、Mo-Si系のModified EAMタイプ原子間ポテンシャルの開発が完了していたと考えられていたが、MoSi_2の面欠陥エネルギーの計算過程で、あるせん断方向に対してC11_b構造が不安定であることが明らかになった。そこで、Mo-Si系ではなく、MoSi_2に最適化したModified EAMタイプ原子間ポテンシャルの開発を行うことで、あらゆるせん断に対してC11_b構造が安定であるポテンシャルの開発に成功した。 2.MoSi_2の面欠陥 我々がこの研究で問題としている{013}面の<331>方向のせん断では、1/6<331>変位、及び逆方向のー1/6<331>変位により逆位相境界(APB)が形成される。前者をAPB(1)、後者をAPB(2)とすると、上記のポテンシャルを用いた計算ではAPB(1)は安定な面欠陥である一方、APB(2)は不安定となる。不安定なAPB(2)の近傍には約1/8<331>の変位に安定な面欠陥が存在することが明らかとなった。また、{110}面の1/4<111>変位は安定な面欠陥を形成し、その面欠陥エネルギーの値は実験値やab initioの計算結果とほぼ等しい値を示す。この面欠陥は1/4<331>変位により形成される面欠陥と等価である。他方、{013}面の積層はABCDEの5層周期で、その法線方向<031>を含む1/10<531>変位により安定な面欠陥を形成可能である。以上の結果より1/2<331>転位では1/6<331>、1/8<331>、1/4<331>、1/10<531>部分転位を考慮した分解を考える必要があることが明らかとなった。
|