研究概要 |
イオンおよび電子を同時または単独で照射したマグネシア・アルミネート・スピネル,アルファ・アルミナ,イットリア安定化ジルコニアに照射し,転位ループおよびボイド等の欠陥集合体の形成過程を透過電子顕微鏡で調べた.さらに超微小硬度試験を行い,照射表面層の力学的性質を調べた.本研究における主な成果は,以下の3つである. (1)アルファ・アルミナおよびマグネシア・アルミネート・スピネルの照射硬化のHeイオン照射量依存性が全く異なることを見いだした.アルミナの照射硬化量-照射量曲線は,3つのステージに分ることが出来,5x10^<19>He^+/m^2以下の低照射量に於いて最も著しい照射硬化を示した.これに対しスピネルの硬化量は,照射量の増加に伴って単調にしかも緩やかに増加し,1x10^<20>He^+/m^2以上の照射量で一定値を示した.照射硬化の機構を荷重-押し込み深さ曲線の解析から考察し,欠陥集合体よりも点欠陥または電子顕微鏡では'見えない微小点欠陥集合体'の寄与が支配的であることを示した. (2)イオン・電子同時照射下における微細組織の「その場」観察実験より,同時照射下では転位ループ形成の抑制またはキャビティー形成の促進が現れることを示した.この現象は,イオン照射下における微小格子間型転移ループの核形成過程とその低エネルギー電子照射下における分解過程の競合によって現れることを示した.さらに,試料によって異なった微細組織変化として現れる同時照射効果の感受性の違いを,転移ループの形成頻度とその安定性の違いから説明した. (3)イオン単独照射下では優れた耐照射損傷性を示す安定化ジルコニアに,イオン照射後に電子を重量照射すると異常なほど大きな欠陥集合体が形成することを見いだした.この形成機構をイオンと電子を,酸素と陽イオン(ZrおよびYイオン)のはじき出し損傷速度の違いを考慮した.イオン照射と電子照射の照射スペクトルの違いから説明した.さらに欠陥集合体形成過程に及ぼす電荷蓄積効果の重要性を指摘した.
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