本研究は疲労の初期段階に導入されると考えられる転位や空孔型欠陥などを空孔型欠陥の検出に最も敏感な陽電子消滅法を用いて検出し、疲労破壊予測の技術開発及び疲労による微少亀裂発生に至る欠陥成長過程の解明を目的とし以下の成果を得た。昨年度までに作成したSUS304鋼及び高純度鉄(4N)を用い疲労試験-陽電子寿命・ドップラー拡がり測定を行った結果、試料中に導入される欠陥が転位による空孔の捕獲、空孔の転位線上での移動拡散、転位網における3次元空孔集合体形成の過程を経て亀裂を生じるという成長過程のモデルが得られた。また、陽電子消滅実験では破断に対し0.01%程度の低疲労量でも疲労による導入欠陥が敏感に検出され陽電子消滅法の疲労量の同定に有効であることが示された。
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