研究概要 |
熱プラズマの主な発生方法は直流アーク放電を用いることであるため,それを材料プロセスに応用した場合,そのプロセスには電極現象が深く関係してくる.しかしながら,電極領域における物理は未だによく解っていない.これは,電極近傍におけるプラズマ特性が非常に急峻な勾配を呈し,実験そのものが困難なためである.また,その領域はアークプラズマと電極との複雑な相互作用によって形成されたプラズマ状態であるため,その取扱いが困難であることも揚げられよう.本研究は,レーザ計測の手法を用いて種々のプラズマ特性を測定することにより,アークから陽極にわたるプラズマの物理構造を明らかにし,材料プロセスにおける熱プラズマの役割を明確化することを目的としたものである. 本年度は,アルゴンGTAプラズマにおけるアークから陽極にわたる電子温度および重粒子(イオンおよび原子)温度をレーザ計測法によって測定した.さらに,以前当研究室でプローブ法によって測定した陽極降下と合わせて検討した結果,次のような物理構造が示唆された. ガスの種類,陰極の材質や形状,アーク電流値を選定すれば陰極領域における電流密度が決定され,そして,それに合わせたローレンツ力による電磁ピンチ力が発生し,誘起されたプラズマ気流の流速が決定される.また,同時にアークプラズマ内の電子密度分布が決定される.これらが決まれば,陰極の周囲からアーク内に導かれる原子の移動速度と平衡反応速度のバランスが決定される.このバランスがアークプラズマの状態を支配し,局所熱平衡からずれた状態,局所熱平衡に近い状態,低温プラズマ状態などのプラズマ状態が形成される.そして,陽極領域におけるプラズマ状態がこれらのどの状態に相当するかによって陽極降下の大きさと正/負の向きが決定される.
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