異種材の接合技術の一つとして、粉末を利用して焼結と同時に接合させる焼結接合技術があり、この中でも拡散接合法と多層成形接合法は、強固な接合強度が期待できる。本研究では高耐摩耗材である高速度工具鋼と純鉄との高信頼性焼結接合技術を開発するため、材料成分と、(1)2層成形接合、(2)成形体同士の接合、(3)溶製材と成形体の接合、の3つの接合法が、接合材の材料特性や接合強度に及ぼす影響について研究実施した。 高速度工具鋼の材料成分では、焼結時の液相量を変化させるために高速度工具鋼にCまたはPを添加し、成形圧600MPaで粉末成形後、真空焼結により無加圧で接合テストを実施し、接合材の接合強度を3点曲げ破断試験により評価した。 Pを添加した高速度工具鋼(Fe-1.1C-4Cr-5Mo-2V-6W-0.25P)の焼結材で高密度化と高硬度化が図られ、この材料と純鉄の焼結接合では成形体同士の接合において、ボイドやクラックの無い健全な接合組織が得られ、最も高い3点曲げ破断強度303MPaの値を示した。一方、2層成形接合では、焼結時の両者材料の寸法収縮量の差により高速度工具鋼内部の接合界面近傍でクラックが発生し、3点曲げ破断強度も低い値を示した。破断部の断面組織観察では、2層成形接合では高速度工具鋼内部で破断していたのに対し、成形体同士の接合では接合界面で破断していた。 これらのことから、Pを添加した高速度工具鋼と純鉄の成形体同士の接合法が、接合強度と耐摩耗性に最も優れた接合材として期待できる。また、2層成形接合では、接合界面で破断していなかったことから、接合界面での接合強度は高いと考えられる。今後は、高速度工具鋼と純鉄の間に、これらの材料の中間の収縮量を持つ成分の中間層を多層成形により作成し、接合部で材料成分を傾斜化してクラックの発生を防止し、より破断強度の高い接合材を開発する。
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