Geを50〜70at%含む四元系Ge-Al-Cr-希土類元素アモルファス合金を単ロール液体急冷法で作製した。Ce、NdおよびLaが高Ge濃度のアモルファス合金を作製するために最も効果的な添加元素であることを明らかにした。この新しい多元系Ge基合金はX線回折ではブロードなハローパターンが得られるが、電子顕微鏡による構造解析の結果、1から2ナノメートルサイズの結晶相がアモルファス母相中に共存する混相状態であった。この合金急速凝固状態での配位数は、0.258nmの第一ピークで2.8、0.310nmの第二ピークで4.4である。熱処理した試料では、0.250nmの第一ピークで、2.9、0.308nmの第二ピークで2.9にそれぞれ変化した。この結果は、熱処理に伴う構造緩和により、アモルファス単相およびGe結晶相に近い正方晶Geの原子配列が形成されたことを意味する。Ge-Al-希土類元素系はアモルファス相と結晶相との混相状態となり、特にLaを含む急速凝固合金で高い体積分率のナノ結晶相が得られる。このアモルファス合金は、熱処理によりアモルファス相+第一未知相→第二未知相の結晶化が進行する。第二未知相は、格子定数がa軸が0.559nm、c軸が0.528nmの正方晶であることが明らかになった。Ge合金とは対照的に、Si-Al-遷移金属およびSi-Al合金のガラス形成能に対して、希土類金属は影響を及ぼさない。Ge-Al-Crアモルファス合金の構造解析をX線異常散乱法で行った結果、Ge原子に対するAlとCrの局所構造は、大きく異なることが判明した。Ge-Ge対の部分配位数は3.4でありアモルファスGeの4.0の値ときわめて近いのに対して、その他の元素対の部分配位数は、約8から10であり通常の金属ガラスの値に近いことがわかった。
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