アーク溶解法により、ネオジム-鉄-アルミニウムおよびネオジム-鉄-シリコン非晶質合金を作製した。得られたバルク状非晶質合金の最大厚さは、60原子分率ネオジム合金で6mm、70原子分率ネオジム合金で3mm厚さであった。これらの非晶質合金は、室温で飽和磁化が0.1T、保磁力300kA/mの硬質磁性を示す。一方、これらの合金を単ロール液体急冷法で作製することにより厚さが20μmのリボン状試料とした場合、同じく非晶質合金が得られるが、保磁力は8kA/mに減少し軟磁性を示す。ネオジム-鉄基合金の示す磁性の試料厚さ依存性を求め、硬質磁性から軟磁性へと変化する臨界厚さが80μmであることを明らかになった。この合金で、磁性の試料厚さ依存症が出現するのは、非晶質合金を作製する際の構造的な緩和の違いにより、冷却速度の遅いバルク状非晶質合金の内部で、硬質磁性の発現に寄与するクラスターが発達するためと考えられる。また、高い非晶質形性能を得るための経験則を熱力学的関数として評価することにより非晶質合金の得るための臨界冷却速度の算出を行った。その結果、ネオジム-鉄-アルミニウム非晶質合金の場合、10原子分率アルミニウムの添加により混合エンタルピーが負の値となると共に、原子サイズ差に基づくミスマッチエントロピーの値が上昇するために、ネオジム-鉄基二元系非晶質合金と比較して臨界冷却速度が大きく減少し、バルク状非晶質合金が作製できることが明らかとなった。
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