研究概要 |
本研究では,ガラス組成よりヤング率を予測するための推定式について検討することを目的とし,多種多様なケイ酸塩,ホウ酸塩,リン酸塩およびテルル酸塩系ガラスのヤング率を実測した.これらガラスのヤング率はおよそ20GPa〜140GPaの範囲でガラス組成に依存し連続的に変化し,その序列は,おおむねアルミノケイ酸塩>ケイ酸塩≧ホウ酸塩>テルル塩酸>リン酸塩系ガラスとなった.これまでに,Makishimaらによりガラス組成から直接ヤング率を予測できる推定式が提案されている.そこで本研究では,まず彼らのヤング率推定式の適用性を調査した.その結果,ケイ酸塩系ガラスのヤング率は精度良く推定できた.しかし,その他のガラス系では実測値と計算値の間で良好な相関性は得られなかった.これは推定式中示されるガラスの解離エネルギーを,単にガラス構成酸化物からの加成性を利用して評価しているためである.すなわち,ケイ酸塩系ガラスの場合,構成酸化物からの加成則は近似的に成り立つが,他の酸化物の添加により著しく構造変化が生じるホウ酸塩,リン酸塩およびテルル酸塩系ガラスでは,組成に依存し変化するガラス特有の骨格構造を考慮する必要があることが示唆された.そこで本研究では,次にこれらガラスの網目形成酸化物であるB_2O_3,P_2O_5およびTeO_2に対し,ガラス骨格構造を考慮した解離エネルギーを実験的に算出し,これを用いてヤング率を推定した.その結果,実測値と計算値は良い一致を示し,様々な酸化物系ガラスのヤング率を組成より予測可能となった.最後に,ヤング率算出の際用いる各酸化物の解離エネルギーの序列を考慮し,高ヤング率ガラスを設計した.その結果,従来報告されている通常の酸化物系ガラスの中で最も高いヤング率を示す30Ta_2O_5-30Al_2O_3-40SiO_2(mol%)ガラスを組成より設計することができた.
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