1.実験による比較 環境保全センター(東北大学)の廃液処理プロセスのデータを対象とした異常検出法について検討した。プロセス信号は、噴霧燃焼により生成した排ガス(NOx)の濃度であり、毎分ごとにサンプリングされる。排ガスの濃度データは、1日あたり510点の非定常時系列データとなる。13日分の濃度データに対して、トレンドを考慮したベイズ非定常時系列モデルを構成したところ、2階のトレンドモデルが優良であることがわかった。各日のデータに対して、トレンドのステップ変化を人工的に追加して異常データとし、ステップ変化を検出する一般化尤度比検定を適用したところ、異常発生時刻をほぼ正確に検出できた。しかし、昨年度の計算機実験の結果と同じく、ステップ幅の値を正確に検出することは困難であった。 2.他研究者による異常検出法(状態判別法)との比較 データマイニングによる状態判別法と比較した。他研究者によって、上記の排ガスの濃度データに温度等の測定信号を加えると、排ガスの濃度データの状態は決定木で分類される。これと比較すると、当研究の手法は単変数を取り扱うため、計算コストの面で有利であり、実行性としてリアルタイムでの異常検出(状態判別)に優れている。 3.プロセス異常検出法の比較 排ガスデータに対して、トレンドを考慮したベイズ非定常時系列モデルを構成し、逐次確率比検定を適用したところ、一般化尤度比検定と同じく異常検出が行えることがわかった。しかし、両検定法とも状態判別のためのしきい値決定法が完全に解決していないため、実プロセスに適用する場合の問題となることが確認された。
|