濾過対象となる難濾過性スラリーとして酵母懸濁液を用い、これにケイソウ土を種々の量で添加してボディフィード型定圧濾過を行い、混合ケークの平均空隙率および平均濾過比抵抗を求めた。ケイソウ土はケーク圧縮性が低いが、酵母は極めて高圧縮性であるため、混合ケークの構造は濾過圧力によって種々に変化した。非圧縮性ケークを生成する2成分系微粒子懸濁液の濾過に関しては、既にケーク構造と2成分の混合割合との関係を表すモデル式が提出されているが、実用上重要な圧縮性ケークについてはこれまで明らかにされていないため、本研究ではその既報のモデル式を圧縮性ケークにも適用できるモデル式へと発展させることを試みた。そのためにはケークの内部構造を理解する必要があるため、ケーク濾過モデルに立脚し、平均空隙率と平均濾過比抵抗の測定データからケーク内の圧縮圧力分布、空隙分布、比抵抗分布の推定データを得た。非圧縮性ケークに関する既報の混合ケークモデルを圧縮性ケークの局所的な構造を記述するモデルと据え、これに圧縮性ケークにおける内部構造の推定データを融合させることにより、圧縮性ケークの構造とケイソウ土添加量との関係を定量的に記述することができる。この新たな混合ケークモデルと実験結果とを比較・検討した結果、モデルの妥当性が実証された。このモデルを利用すると、任意のボディフィード量ならびに任意の濾過圧力における濾過速度の推定が可能となり、さらには最適ボディフィード量の決定にも応用することができる。以上のように、本研究の実用的重要性は言うに及ばず、2成分系微粒子懸濁液の濾過機構の解明という点で、学問的な価値も極めて高い。
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