これまで吸着科学的手法を用い、化学的表面改質による物性変化が固体表面、改質基構造及び改質量に起因することを見いだした。しかし、これら吸着科学的手法からの結論は間接的情報の基ずくため推測によるところが多い。そこで、雰囲気調整セルを用いたAFM観察を行い直接的情報を得ることで、これまでの吸着科学的手法から得た結論をより強く裏付けしたいと考え、今年度は組成がコントロールされた溶液中での観察を試みた。 表面キャラクタライズされたシリカ基盤表面の水酸基に対し、アルコール系の各種改質剤を化学反応させ分子構造の異なる各種疎水性表面を作製した。反応は既存のオートクレーブ装置により行い、任意の改質基を任意量表面に導入した。既存の装置により吸着科学的手法を用いて、試料表面に導入された改質基の単位面積当たりの表面密度について検討した。また既存のIR及び固体NMR測定から改質基の表面構造や各種条件でのコンフォメーション変化について検討を行った。一方、本申請で購入した紫外可視検出器で吸着量をモニターしながら雰囲気調整セルを用い、種々の条件下での表面改質基の原子間力顕微鏡(AFM)観察を行い、原子・分子オーダーでの直接的な情報を得た。 以上の結果から改質基密度が低い場合、改質基は自由度が高く表面に寝たかかたちで存在していることがわかった。一方、高改質基密度の場合、化学結合した改質基は部分的に集合状態をとることでその運動状態が制限されることがわかった。またこれらの集合体はアルキル基の最密充填構造であることがAFMの直接観察より明らかになった。
|