一般に、粉体の乾式操作は粒子の帯電現象を伴う。電子写真、粉体塗装、静電分級といった分野では、この帯電を積極的に利用している。一方、粉体製造、粉体輸送、半導体製造、液晶パネル製造といった分野では、粉体の帯電がトラブルの原因となることが多い。粉体の帯電を積極的に利用したり、粉体の帯電によるトラブルを防止したりするためには、粉体の帯電特性を定量的に評価することが必要不可欠である。しかし、現在のところ、粉体の帯電現象の制御は経験的に行われているのが実状である。粉体が接触・分離を繰り返しながら摩擦帯電するとき、粉体の基礎物性(粒子径、粒子形状、比表面積、力学的特性、表面性状など)や操作環境条件(温度、湿度)などの影響を大きく受ける。これらの因子が摩擦帯電量に及ぼす影響について明らかになれば、粉体の帯電量を推定することができると考えられる。本研究では、これらの諸因子が帯電に及ぼす影響について理論的・実験的に検討を行い、粉体の帯電特性が関与するプロセスにおいて実用できる帯電量推定モデルを提案することを最大の目的とする。 平成12年度における研究では、粉体の摩擦帯電現象に及ぼす粉体の表面状態の影響について、フェライトコアの表面にシリコーン樹脂をコーティングした試料粉体を母粒子とし、子粒子が付着した粉体を作成することにより検討を行った。その結果、子粒子同士がネットワーク構造を形成する前の粉体の接触電位差は、子粒子の初期電荷により混合比に比例して増加することがわかった。また、子粒子同士がネットワーク構造を形成すると粉体の接触電位差は、子粒子の初期電荷が緩和して子粒子固有の接触電位差に近づくことがわかった。さらに、このような粉体の電荷緩和時定数は、子粒子同士がネットワーク構造を形成するまでは、混合比に比例して大きくなることがわかった。
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