昨年度開発した超臨界水装置を用いて、超臨界水中でのO_2と水和電子の反応速度定数の密度および温度依存性を測定した。水和電子は、電子加速器からの電子線パルスを超臨界水に照射し、水分子のイオン化により生じる2次電子により生成される。速度定数は密度の増加に従って減少するが、水の臨界密近傍を境に急激に増加に転じるV字型の密度依存性を示した。また、温度の増加に伴い、そのV字の谷は低密度側へ移行することが明らかとなった。このような、密度依存性を示す理由として、いくつかの因子が考えられる。一つは、誘電率の変化である。水和電子は、誘電率の変化に敏感で、その水和構造も大きく変化したため、反応速度が上記のようなV字型依存性を示す可能性がある。しかし、速度定数と誘電率変化とには正の相関関係は見られなかった。別の可能性として、水素結合ネットワークの変化にともない水和電子の構造が変化し、その構造変化が反応速度に影響した可能性がある。生島らが超臨界水中での水素結合の変化を測定しているが、その変化と反応速度の密度依存性はよく対応している。この点に関しては、更なる検討が必要である。
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