本研究では、食品添加物用途のβ-カロチンの酸化防止法として、脂質相と内部水相が重なり合った擬生体膜構造を有するリポソームによる包括法に注目し、リポソーム内でのカロチンの酸化機構、ならびにビタミンEやCなどの脂溶性・水溶性抗酸化剤を共に内包した場合の酸化防止機構の解明を目的とする。昨年度は、カロチンを内包したリポソーム懸濁液を作成し種々の条件下で酸化実験を行い、内包カロチンの酸化防止には不飽和度の低いホスファチジルコリン(PC)を用いてリポソームを作成すること、ビタミンEとCを共に内包させることが有効であることを示した。 本年度は、リポソームの油-水界面で起こる反応に着目し、不活性なn-デカンとTris-HCl緩衝液からなる二相系においてカロチンの酸化実験を行い、種々の条件でビタミンEやCを添加した場合のカロチンの酸化挙動を検討した。その結果、油相中のビタミンEが存在している間はカロチン酸化の進行が抑制されること、水相中のビタミンCにはカロチン酸化を抑制する働きがないことが分かった。また、ビタミンEとCの共存下では、ビタミンCがEの再生反応を行うことにより間接的にカロチン酸化を抑制していること、ビタミンCがEの消費反応も行っていることを明らかにした。さらに、ビタミンC濃度が低い場合にはEの消費反応が優先的に起こるため、カロチンの酸化抑制期間が短くなること、これに対して、ビタミンC濃度が高い場合には再生反応が優先的に起こるため、系内のビタミンEが長期間一定濃度で保持され、カロチン酸化の進行が長期に渡って抑制されることを示した。 以上の結果から、ビタミンEと高濃度のビタミンCを共に添加することは、リポソーム内包カロチンの酸化防止に極めて効果的であると考えられる。
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