研究概要 |
種々のジカルボン酸とジアミンからポリアミック酸を合成した後,この溶液をガラス板上にキャストして炭素膜の前駆体となるポリアミック酸膜を作製し,これを300℃まで加熱して構造既知のポリイミド膜を作製した.主に膜のミクロ孔に及ぼす膜作製条件の影響を検討するため,製膜はゲル化により行い,マクロポアが存在しない緻密膜を得た.この緻密なポリイミド膜を窒素雰囲気下で炭化し炭素膜を作製した. ボリイミド膜の炭化に伴う構造変化を検討したところ,前駆体種,溶液濃度などの製膜条件に関係なく500℃付近より全重量および酸素,窒素,水素分が大きく減少した.また,700℃以降は緩やかに減少し900℃ではほとんどが炭素分からなる膜となった.元素組成の変化を検討したところ,前駆体であるポリイミド膜中の含酸素官能基の違いにより,膜中の酸素分が減少する温度は変化した. 得られた炭素膜について,種々の分子径を有するガス(ヘリウム,二酸化炭素,メタン,エタン,ブタン,イソブタン)の透過特を検討した.作製した炭素膜は全て,透過ガスの分子径の増加に伴い透過速度が減少する分子ふるい性を示した.また,ガス透過特性に対する炭化温度の影響を検討したところ,700℃付近までは炭化温度の上昇とともにガス透過速度が増加し,さらに加熱すると透過速度は減少した.これは炭化温度500℃から700℃まででポリイミドが分解し,ガスやタ一ルとなって揮発することによりミクロポアが生成してガス透過速度が増加し,さらに炭化温度を上げた場合には炭素膜のグラファイト構造が発達してミクロポアとなるグラファイト層間が収縮するため,透過速度が減少したと考えられた.また,ガス透過性は膜前駆体の種類や膜作製時の溶液濃度によっても大きく影響されることを示唆し,ポリイミド膜作製条件及び炭化条件を制御することにより100以上ものメタンに対する二酸化炭素の選択係数を有する炭素膜の作製に成功した.
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