今年度の研究では、白金ナノ粒子の形態制御に有用なポリマーの探索および実験条件の検討を行った。まず、塩化白金酸カリウム水溶液に水素ガスを吹き込んで白金ナノ粒子を調整する際に、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、NIPA(N-イソプロピルアクリルアミド)線状ポリマーをそれぞれ共存させ、ナノ粒子生成の際に共存するポリマーが形態に及ぼす影響を検討した。その結果、還元の際に共存するポリマーの種類によって、得られる白金微粒子の形態に顕著な違いが現れた。特に、NIPAの場合には、多数の粒子がTEM観察下で正方形の形状を有していた。HR-TEMでの観察結果、これらは粒子表面に[100]面を選択的に有する立方体の粒子である事が判明した。NIPAは室温付近で感温性を有するポリマーであり、本実験で用いた線状ポリマーは309Kに相転移温度を持つ。そこで、このポリマーを用いて、相転移温度の上および下の温度でそれぞれ還元実験を行った。その結果、粒子形態は反応温度によって大きく影響される事が明らかになった。特に、[100]面を有する立方体粒子は、相転移温度よりも高い温度条件下、すなわちポリマーが疎水的になったときに選択的に得られる事がわかった。一方、NIPAポリマーの濃度が白金ナノ粒子の形態に及ぼす影響を調べた結果、温度条件に比較して濃度条件が粒子形態に与える影響は小さい事がわかった。以上の事から、感温性を有するNIPAポリマーが、(1)白金ナノ粒子の形態制御に有効である事、(2)表面に[100]面のみを持つ立方体粒子を最高で約70%得る事ができる事、(3)形態制御機構の中でポリマーの疎水性が重要な寄与をしている事、等が明らかになった。
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