昨年度の研究で白金ナノ粒子の形態は共存する感温性ポリマー(N-イソプロピルアクリルアミド:NIPA)の親・疎水性によって大きく左右されることが明らかになり、疎水性のポリマーを利用することによって表面に[100]面のみを持つ立方体粒子を最高で約70%得ることに成功した。本年度はその結果をふまえ、金属ナノ粒子表面とポリマーとの相互作用について考察するために(1)ポリマーの種類を変化させた実験、(2)DSCによるポリマーの周りの水構造に関する実験、(3)fcc構造を持つ他の金属(金)との比較実験を行なった。その結果、ポリマーの種類によって得られる白金ナノ粒子の形態が異なることが明らかになった。また、60℃付近に相転移温度を有するポリビニルアルコールを用いた実験の結果はNIPAでの実験結果と一致し、ポリマーの疎水性が形態制御に有効であることを示した。これらの結果は、ポリマーの周りの水構造が金属ナノ粒子の形態形成過程において重要な役割を持っている事がを示唆している。そこで、DSCを用いて相転移温度付近、及び水の融点での水構造を調べた。白金イオンとNIPAのみの系、白金ナノ粒子とNIPAの共存する系、NIPAのみの系について、イオン強度をそろえた比較実験を行なったところ、ポリマーの周りの水構造は各場合で有意に異なっている事が明らかになった。これは、金属ナノ粒子表面とポリマーとの間で、水を介した何らかの相互作用がある事が示す初めての知見である。白金と同じfcc構造を持つ金を用いた場合にも上記と一致した結果を得ることができた。以上、感温性ポリマーを用いた液相中での白金ナノ粒子の形態制御について、ポリマーの作る疎水性の反応場の重要性が結論できた。この結果は、白金以外の金属にも適用可能なものと言える。しかしながら、反応場が形態に影響するメカニズムについては、更なる研究の必要性が明らかになった。
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