研究概要 |
軟X線領域XANESを触媒化学における活性種局所構造解析に応用し,各触媒系の活性評価とXANESによる構造評価をあわせて行うことにより触媒活性制御因子を検討した。L殻XANESとしてモリブデン、K殻XANESとしてマグネシウムの各原子をターゲットとし、各触媒系の活性種局所構造を厳密に評価した。第一に、担持モリブデン系におけるオレフィンのメタセシス触媒活性を中心に検討した。メタセシス活性種は五価モリブデンなどの還元イオンとされており、一般に触媒の還元前処理が必要とされているが、その結果、我々はシリカアルミナ上のモリブデンが還元前処理を行うことなく、室温でも特異的に高い触媒活性を示すことを見出した。本触媒のモリブデン活性種局所構造をL殻XANESより検討したところ、4面体配位を多く含む低重合ポリアニオン種が支配的であり、これがシリカアルミナ担体との強い相互作用を受け活性種の前駆体となることを示唆する結果を得た。さらに、これらはオレフィンとの接触により部分的な還元を受けて特異なメタセシス活性種を形成することがわかった。第二に、酸化マグネシウムへのリチウム添加による構造変化をK殻XANESより評価し、メタン酸化カップリング触媒活性との相関について検討した。その結果、低濃度のリチウム添加が岩塩型酸化マグネシウム表面近傍に欠陥構造を局在させることを見出し、バルク相の結晶性の結果とあわせ、触媒活性には表面のみならすバルク相の寄与が必要である結論を導いた。以上の二つの軟X線XANESの応用の過程では、重畳波形分離処理や二次微分法といった波形処理を導入し、XANESの成分分離解析が局所構造の解明の重要な一助となることを導いた。
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