研究概要 |
本研究は、無機粘土鉱物であるハイドロタルサイト(HT)や金属クラスターの特性を活用し調製したハイブリッド型触媒による超効率分子変換を目的とした。 1、ハイドロタルサイト(HT)では、基本層を構成するMg,Alの元素比や、層間のアニオン種を選択することで表面水酸基による塩基性を制御できる。この様に得た固体塩基触媒は、過酸化水素を酸化剤とするオレフィン類やピリジン類の酸素化反応を、高選択的に進行させることができる。また、焼成したHT表面に発現する独特の酸点・塩基点を利用すると、CO_2を効率的にエポキシド類に付加させ、環状カーボネート類を温和な反応条件で高収率に得ることができる。 2、HTの基本層にルテニウムカチオンを導入した固体触媒では、分子状酸素を酸化剤に用いた各種アルコール類の酸化反応が効率よく進行する。さらに、コバルトやマンガンを基本層に共存させると、同一固体内での酸化還元相互作用によって、触媒活性が向上し、芳香族炭化水素のC-H結合酸素化反応にも優れた触媒作用を示すことも見出した。 3、パラジウム錯体と金属硝酸塩を反応させると、巨大パラジウムクラスターが調製できる。 この時、硝酸塩の量を調整することで、生成するパラジウムクラスターの粒子径と表面酸化状態を精密に制御できることを見出した。これらパラジウム巨大クラスターは、分子状酸素を酸化剤とするアセトキシル化反応を効率的に進行させる。さらに、これらクラスターは優れた触媒作用を損なうことなく、酸化チタン表面に固定化できた。 上記の触媒は、反応終了後、容易に反応溶液から分離でき、活性・選択性を維持したまま再使用が可能である。 本研究により、層状粘土鉱物や金属クラスターを原子レベルで機能設計したハイブリッド型化合物を触媒に用いると、超効率的な分子変換反応が可能であることを明らかにした。
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