本研究は逆ミセル中の超微小空間において水を光分解する新規な光触媒反応系の構築を目的とした。通常水の光分解は半導体粒子を水に縣濁させて行われるが、発生した水素と酸素の逆反応の抑制が課題となっている。本研究で用いたw/oエマルション系では、生成した水素および酸素ガスを水相から有機相に分離することによって逆反応を防止できる可能性がある。本年度は、設備備品費で石英製光触媒反応器、光源、ガスクロマトグラフを、消耗品費でガラス器具やバルブ類を購入し光触媒反応装置を組み上げた。本研究で作成した光触媒反応装置は、接液部分をすべてグリースレス化することによって有機溶媒を分散媒とした光反応を行うことができる。本年度は、通常の含浸法によって調製したPt/TiO_2を陰イオン性界面活性剤である OTP-100S のシクロヘキサン溶液に懸濁して水の光分解反応を行った。このエマルション分散液に少量の水を添加して光照射を行うと、水素と微量のCOが生成した。この水素生成速度は水の添加量に依存し、軽水の代わりに重水を添加した場合重水素が優先的に生成することから、この水素生成は有機物ではなく主に水の分解によって生じていることが確認された。また、純水分散系と比較して数倍の水素生成速度を示すことから、エマルションの形成によって水の分解反応が促進されることが示唆された。また、非イオン性界面活性剤の NP-6を用いた場合、OTP-100Sと比較して5倍以上の水素生成速度を示し、界面活性剤の極性および水の吸着状態によって水の分解速度が変化するものと考えられる。
|