本研究の目的は、DNA分子1個のゲノムマッピングを近接場プローブ顕微鏡を用いた蛍光観察で行うことにある。そのためには、蛍光標識された特異的オリゴヌクレオチドがハイブリッドした単一DNA分子を基板上に引き伸ばして固定化する新手法の開発、また超高感度での蛍光観察のための近接場プローブ顕微鏡へのフォトンカウンティング技術の応用が必要不可欠である。そこで本年度は、固体基板に引き伸ばして固定化されたDNA1分子に結合した蛍光標識プローブを調べるために、新たにフォトンカウンティングを装備した超高感度近接場プローブ顕微鏡を用いて、引き伸ばされたDNA1分子の蛍光像とDNA自信のトポグラフ像(表面の凹凸)を同時に測定した。具体的には 1)現有の近接場プローブ顕微鏡の顕微鏡サイドポートにフォトンカウンティングシステムの一部である光電子増倍管を接続して、フォトンカウンティングした信号を近接場プローブ顕微鏡制御部に導入することで、近接場プローブ顕微鏡の高感度化することができた。 2)カチオン性の脂質単分子膜をDNA水溶液上に展開し、気水界面にて脂質-DNA複合体の単分子膜を形成させた。これをガラス基板に垂直引き上げ法により移し取り、DNA試料を作製した。超高感度近接場プローブ顕微鏡により観察したところ、DNA-分子が引き延ばされてまっすぐな形でガラス基板に固定化されていることがわかった。これはDNA固定化の新手法であると言える。 来年度は無蛍光標識二重らせんDNAを引き伸ばしてガラス基板に固定化し、FISH法を行い超高感度近接場プローブ顕微鏡で蛍光プローブの空間的位置を一分子レベルすなわちナノメーターレベルで計測する予定である。
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