研究概要 |
本研究は、イネ培養細胞を用い、その化学的、物理的あるいは生物学的ストレスシグナルに対して発現する遺伝子を具体的な対象遺伝子とし、この遺伝子発現を指標として,細胞内情報変換のリアルタイム解析を目標としている。本年度は最終年度であり、安定した微小電極作製の技術の向上と、蛍光物質導入による細胞状態の可視化について解析した。具体的な項目を以下に示す。 1.細胞内遺伝子導入量の定量化:従来用いていた微小電極による遺伝子導入には、どのくらいの遺伝子量が導入できたのかということは全く不明であった。そのために、遺伝子を発現する細胞の率が極めて低かった。そこで、あらかじめプラスミドDNAとPIを結合させたものを微小電極の中に充填し、シリコンオイル中に作っておいた水滴中に、電気泳動的に導入した。その結果、電圧を印加し続けると、DNAが導入され、印加を停止するとDNAの導入も停止するという、いわゆるON-OFFが観察された。また、導入されたDNA量は、印加する電圧の強さに依存することもわかった。その量は、5V、5分間印加で約100pgであった。 2.蛍光物質導入による細胞状態の可視化:GFPの細胞内滞留の問題を解決するには至らなかったが、細胞応答として、[Ca^<2+>]i変化、代謝変化、遺伝子発現といった一連の反応を考え、それぞれの変化を蛍光標識化合物で観察することとした。その結果、[Ca^<2+>]iの変化にはFluo-3を、代謝変化には、グルコースならば、当研究室で開発された蛍光グルコースを用いた場合、新しいイメージスライサー型顕微分光システムを用いることで、GFPと蛍光波長が近いものでも、細胞応答を分光学的に解析することが可能であることがわかった。
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