ポイントオブケア検査(POCT)における需要から、臨床診断機器の小型化が重要な課題となっている。複雑な工数を簡便な装置内で完了させるためには、種々の操作を簡素な機構で実現するにはフローシステム内に完成させることがもとめられる。そこで、本研究ではオンチップキャピラリー電気泳動(CE)によりアルカリフォスファターゼ(ALP)の酵素活性検出を目的とし、エンザイムイムノアッセイ(EIA)への応用を試みた。検出方法はキャピラリー内で起こる酵素反応を利用し、生成物をレーザー励起蛍光検出した。 まずフォトリソグラフィーとHFエッチングにより、ガラス基板にチャンネルパターンを形成した。これと超音波加工によりチャンネルの端点に合わせて穴を開けたガラス板と溶融接合した。その後、穴に合わせてリザーバーを設けてチップを完成させた。アルカリ溶液による十分な洗浄の後、チップをバッファーで満たした。さらにメインキャピラリーを基質となるフルオレセイン二リン酸(FDP)で満たし、電圧を印加した。double-Tインジェクター構造を利用して所定濃度のALP溶液を導入した。導入、分離、オンキャピラリー酵素反応、検出という手順を経た。導入部より55mm下流における蛍光強度を、Arレーザを用いた蛍光顕微鏡とフォトンカウンターとの組み合わせにより経時測定した。 ヒト胎盤由来ALP(PLAP)を導入すると、安定して2つのピークを得た。左のピークがフルオレセインとわかった。リン酸基を有する方がより負に荷電しており、電気泳動的負の移動度が大きく右のピークになるという結果とも合致する。さらにこの方法をEIAに応用してみた。抗体としてALP標識の抗マウスIgG、抗原としてマウスIgGを用いたところ中間的な混合比において、B/F分離をしめすピークを得た。 さらに同様のチップ構造をポリマーによって作製可能であることがわかった。
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