研究概要 |
1.ポリウレタン発泡体(PUF)スカフォルド/肝細胞組織体(スフェロイド)のラットへのインプラント実験 (1)親水性PUFを利用したスフェロイド早期形成法の確立 生体に馴染みやすいPUF作製を目的に親水性PUFを作製した。肝細胞を培養した結果,従来の疎水性PUFでは培養3日程度かかっていたスフェロイド形成が培養1日程度で行われることを見出した。この早期形成されたスフェロイドは,培養下において少なくとも3週間以上良好な機能発現を維持した。 (2)PUFスカフォルド/スフェロイドのインプラント実験 上記で確立したPUF/スフェロイドをラット皮下にインプラントした結果,3日目にはPUF孔内への生体組織の侵入が見られ,5日目には血管新生が見られることがわかった。しかし,PUF内のスフェロイドは生着できておらず,その数は2週間の間に徐々に減少した。 現在,インプラントしたPUF/スフェロイドの組織学的観察と肝細胞の増殖が見られないかを長期的に評価する方向で検討を進めている。 2.生分解性高分子を用いたスカフォルド作製と肝細胞培養 分解速度の制御や加工の容易さから,グリコール酸と乳酸の共重合体であるPGLAとポリ乳酸(PLA)を選択し,ガラス板上にフィルム状のスカフォルドを作製した。このスカフォルド上で肝細胞を培養した結果,初期に付着した肝細胞は徐々に集合し,PGLAでは約培養3日目に,PLAでは約培養7日目に数mm程度の大きさの肝細胞組織体を形成し,スカフォルドから離れ浮遊した。また,この組織体はPUF/スフェロイドと同程度の機能を少なくとも2週間以上良好に維持することを見出した。 現在,インプラント実験に向け,多孔質や不織布構造のスカフォルド作製と肝細胞培養を検討している。
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