研究概要 |
(1)摘出灌流血管における外因性NOの影響 摘出イヌ大腿動脈を対象として流れ依存性の内因性NO産生を評価し(Med.Biol.Eng.Comp.,1999)、その結果に基づき流れ依存性の内因性NO産生に外因性NOの与える影響を評価した。外因性NO投与により約40%の内因性NO産生量の減少を示した。しかし、NO合成酵素のcofactorの一つであるテトラヒドロビオプテリン(BH_4)の投与によりほぼコントロールレベルまで回復した。 (2)ラット腸間膜小動脈血管壁内NOの可視化 摘出ラット腸間膜小動脈モデル(外径:約300μm)を対象としてニトログリセリン(NTG)投与による血管壁中におけるNOの生成の可視化を試みた。NOに選択的に反応する細胞膜透過性蛍光指示薬(DAF-2DA)を同時に投与すると血管壁がほぼ均一に蛍光を発した(蛍光ピーク波長:約515nm)。さらにNTG由来のNO生成メカニズムに血管壁中のチオール基を有する分子が関与していることとNTG由来のNO生成が1〜2分で生ずることを明らかにした。 (3)ヒト体内総NO産生速度の推算 血管壁内レベルでのNO物質移動モデル解析に先駆け、生体を1つのコンパートメントと考え、single-pool modelによる生体内総NO産生速度の推算方法の開発を行った。絶食時(14時間)の血中硝酸イオン濃度から推算したところ400〜650nmol/mmと求められ、従来法(尿中硝酸濃度と尿量との積、RI法など)により求められた値と同じレンジ内の値となり、簡便にNO産生速度が推算でき個体内あるいは個体間の定量的な比較が可能と考えられた。
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