フェムト秒光熱交換分光法を固液界面に適用し、今まで検出不可能だった固液界面の微小な誘電率の変化を計測することに成功、固体側から液体側への超高速エネルギー移動のその場計測を実現した。その結果、固液界面における超高速エネルギー移動について次の知見を得た。 (1)ルチル構造酸化チタン単結晶とチオシアン酸カリウム水溶液の界面に150フェムト秒のパルスを入射し、その後の誘電率の過渡的変化をモニターした。その結果、従来知られている電子・ホール再結合の成分に加えて、110フェムト秒から690フェムト秒の速い時間領域で緩和する成分が新たに観測された。この速い成分の強度はチオシアン酸カリウムの濃度を増加させると増大した。これは超高速時間領域で励起状態のキャリアが吸着種であるチオシアン酸イオンに移動していることを示している。このような速い時間領域での電荷移動はこれまでの理論では説明できず、励起状態のホールが非平衡な状態でチオシアン酸イオンに移動していることを示唆している。これは酸化チタンのホットキャリアとその吸着種の相互作用の初めての観察である。光触媒、光電極として有名な酸化チタンでこのような相互作用が観察された意義は極めて大きい。 (2)金/塩化ナトリウム水溶液界面におけるエネルギー移動を表面プラズモン共鳴過渡反射格子法で観測した結果、ホットエレクトロンによる緩和と界面熱移動による緩和の2種類の成分が見られた。塩化ナトリウムの濃度を変化させて測定した結果、ホットエレクトロンと吸着種との電子的な相互作用が存在し、それがエネルギー移動に影響を与えていることが示唆された。
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