蛍光X線ホログラフィーは回析法と異なり、散乱の位相情報が含まれるために、特定の元素の周りの原子配列を三次元的にイメージ化できる。本研究では、この蛍光X線ホログラフィー法を用いて、低濃度不純物周辺の局所構造解析を行う。蛍光X線ホログラフィー法はその信号が微弱であるため、純粋なホログラム成分を生データから抽出するのが困難である。この問題を解決するために高輝度光科学研究センター・スプリング8において、高計数率で蛍光X線を検出するために湾曲グラフィトとアバランシェフォトダイオードを用いて、銅単結晶からの蛍光X線ホログラムを測定した。湾曲グラファイトは蛍光X線を広い立体角でかき集め集光することが目的であり、一方、アバランシェフォトダイオードは100万CPS以上で蛍光X線を検出することが出来る。実験の結果、従来のデータより格段S/N比の向上したホログラムデータを極めて短時間で得ることに成功した。また、同じ目的で、検出器に多素子の半導体検出器を用いて、ガリウム砒素中の微量亜鉛元素からのホログラム測定を行った。多素子の半導体検出器は微量元素からの蛍光X線を検出することに向いている。実験の結果、S/N比は単素子の半導体検出器を使用した場合に比べ格段に向上し、蛍光X線強度の角度依存性は結晶の対称性を反映していることが分かった。このことより、微量元素の蛍光X線ホログラフィーを短時間で測定することに成功したと言える。その他、高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設で行ったストロンチウムチタン酸単結晶のホログラムデータから、高分解能の原子像を得るための数値解析法の開発を行った。
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