近年、リチウム二次電池の研究開発が盛んに行われ、正極にリチウム含有遷移酸化物を、負極には高黒鉛化炭素材料を用いた二次電池が市販されるに至った。また、さらなる高エネルギー密度化及び安全性の向上を目指して、電解質に液体ではない固体高分子電解質を用いたリチウム二次電池の研究・開発が盛んである。固体高分子電解質を用いたリチウム二次電池は1)安全性が高い、2)加工性に優れる、3)高エネルギー密度を有するなどの利点がある一方で、イオン導電性が低い、正極及び負極合剤中での高分子電解質/活物質界面の接触性が悪いなど解決すべき問題点が未だ多く存在する。固体高分子電解質の研究は数多いが、そのほとんどは前者のイオン導電性の向上を目指したものがほとんどであり、電解質/電極界面に着目した研究は少ない。そこで、本研究では可塑剤含有固体高分子電解質を作製し、その電解質/電極界面におけるイオン移動反応の解析し、電池性能に極めて重要な電解質/電極界面設計の指針を得ることを目的とした。その結果、1)電池活物質/ポリマー電解質問の界面抵抗には高周波数成分、低周波成分の2種類のものが存在することが分かった。2)電解質塩にリチウムトリフレートを用いた場合、界面抵抗の不可逆成分が4.0V(vs Li/Li^+)近傍の電位から生じることが判明した。イミド塩を用いた場合は、リチウムトリフレートよりも貴な電位まで安定であることも見いだした。3)可塑剤の分子量にはイオン移動の活性化エネルギーは依存しないことが分かった。4)多孔性ポリマーマトリックスを利用したポリマー電解質を用いた場合、界面抵抗は<100Ωcm^2であることが分かった。今後の課題として、詳細な解析のためには真の表面積が規定できる薄膜材料の作製が不可決である。
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