N_2Oは対流圏での代表的な温室効果ガスの一種であるとともに、成層圏におけるNOとNO_2の生成源として、大気中の窒素酸化物濃度の上昇やオゾン層破壊に対して重要な役割を果たしている。N_2Oの濃度が上昇し続けているという測定報告があり、生成源についてさらなる研究が必要とされている。そこで、大気中での新たな生成過程として、オゾン(O_3)とN_2によるN_2Oの生成及び消滅反応についてab initio分子軌道法により検討した。12年度はとくに、O_2(^1Δg)と反応することによりN_2Oが消滅し、NO_2とNOを生成する経路について検討した。 1重項状態において、CISD/6-311G^*法により構造を最適化し、MR-SDCI/ANO-S(4s3p2d)法によりエネルギー値を見積もった。N_2OがO_2(^1Δg)と反応すると、ONOの結合角が約60゜の安定構造N_2O_3になり、N_2OとO_2からの相対エネルギー値は60kcal/molである。また、反応の活性化エネルギーは93kcal/molである。このN_2O_3はONOの結合角が66゜であるNO_2(^2B_1)とNOへの分解経路につながる。NO_2(^2B_1)とNOの解離状態の相対エネルギー値は59kcal/molであった。N_2O_3は容易にNO_2(^2B_1)とNOに分解するが、N_2OとO_2(^1Δg)からの活性化エネルギーが大きいため、この反応はN_2Oの消滅源、NO_2とNOの発生源としての重要性は低いと考えられる。 加えて、星間分子であるC_3クラスターの1重項、3重項、負イオンの励起状態を含むポテンシャルエネルギー面を求め、異性化反応を論じた。直鎖の^1Π_u状態では非対称伸縮振動方向にエネルギーが下がり、非対称安定構造から対称構造への活性化エネルギーは実験で示唆されている値と良い一致が見られた。
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