本研究ではアンモニア-アルカリ性電解浴からの電解を用いたCdTe化合物半導体薄膜の作成において、電極表面への可視光を照射することで電析速度が増大する光アシスト効果について詳細に調べることを目的としている。 本年度はTeO_2およびCdSO_4を含むアンモニア-アルカリ性水溶液を用い、カソードの金めっき銅板上に、種々の定電位電解条件下でCdTe薄膜電析を行った。光照射の際の光源にはハロゲンランプあるいはキセノンランプを用いた。ランプの強度は備品として購入した多素子熱電対タイプのレーザパワーメータを使用して実測した。pH10.7の浴を用いてサイクリックボルタモグラムを測定したところ、カソード分極時の光応答はCdTe化合物が電着し始める-0.30V vs SHE付近よりも低電位側でみられた。モノクロメータを用い、キセノンランプからの白色光を分光した光を照射し、光応答の波長依存性(作用スペクトル)を調べたところ、CdTe化合物のバンドギャップ1.44eVに相当する波長約850nm以下で光応答が観測された。これらのことから、光照射効果は基板表面に電析したCdTeの光触媒によるものと考えられた。また、化学量論組成に比べTe-richの電析物が得られる電解条件のほうが、光を照射した際の電流増感は顕著であった。電析物の全量分析から計算した電析電流効率は、暗下では52〜60%であったのに対し、光照射時の電流効果は82〜94%に上昇した。その結果、一定電気量(1.5C)の電解に要する時間は光照射によって1/2〜1/5に減少した。また、電析組成は光照射によりわずかながらCd-rich方向に変化したことから、光による電析物の組成制御も可能ではないかと思われる。 来年度は、分光した光を照射しながらのバルク電析について検討する予定である。
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