当研究室では金属ポルフィリン錯体を光触媒として用いることにより、水を電子源、酸素源としたオレフィン類のエポキシ化反応、またはアルカン類の水酸化反応を見出している。本反応系の特徴は、化学的に安定な水分子を可視光により活性化できるエネルギー蓄積型反応系を構築可能な点である。この光触媒を半導体電極上や半導体微粒子上に修飾することで、均一溶液中では達成困難な様々な機能の発現が期待される。これまでに、カチオン性、ノニオン性、アニオン性の置換基を有するRu(II)テトラフェニルポルフィリン誘導体を合成し、二酸化チタン電極、二酸化チタン微粒子への吸着挙動を検討した。吸着は主に溶液中での含浸法により行った。吸着挙動は、溶液のpHに大きく依存するが、特に酸性下、アニオン性のポルフィリン錯体は強力な吸着能を示した。これらポルフィリン修飾二酸化チタンに可視光(550nm)を照射したところ、高いICPE特性を示した。またその作用スペクトルはRuポルフィリンの吸収スペクトル形状とよく一致した。基質として、シクロヘキセンを共存させると、可視光照射により低収率ながらシクロヘキセンオキシドを得ることができた。本系では、二酸化チタンが電子受容体として、シクロヘキセンが電子供与体として働いており、犠牲試薬を用いない光エネルギーから化学エネルギーへの変換が達成できたと言える。現在、さらにシクロヘキセンのエポキシ化の高効率化を検討中である。
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