ガラスの結晶化過程を解明する上で核生成挙動は非常に重要となるが、ガラス中に存在する核は非常に微小であるためその量の評価が非常に困難である。従来は、微少な核を観察可能な大きさまで成長させてからその数を数えるという手法が一般的であったが、これは多大な手間と時間を要する方法である。そこで、簡便に核生成量を測定するために示差熱分析(DTA)を用い、核生成挙動の評価を試みた。DTAから求められる結晶化ピーク温度をガラス中に存在する核の数密度の指標として、49Na_2O・49SiO_2・2ZrO_2および47Na_2O・51SiO_2・2ZrO_2ガラスを対象に核生成挙動の評価を行った。 DTA測定はバルク試料について10℃/minの昇温速度で行った。430℃で熱処理を行うと、熱処理時間とともに結晶化ピーク温度は低下し、結晶化ピーク温度の低下が生成した核の数密度の増加に対応していることがわかった。400〜580℃で熱処理温度を変えて3時間および6時間の熱処理を行った場合、結晶化ピーク温度はどちらの組成でも460℃で極小値を示し、460℃で核生成速度が最大になることが示された。 結晶化ピーク温度は核の数密度と相関性があるものの、両者の関係については不明である。そこで、DTA曲線を計算によりシミュレートすることにより結晶化ピーク温度を求め、結晶化ピーク温度と核の数密度の関係を求めた。DTA曲線はガラスの結晶化分率の時間微分に対応すると考えられることから、ガラスの結晶成長速度式を仮定して結晶化分率を計算し、その時間の2階微分が0となる温度を結晶化ピーク温度として求めた。その結果、見熱処理ガラス中に存在する核の数密度に対する相対値を、結晶化ピーク温度から求めることに成功し、遷移核生成から定常核生成への移行の様子を明らかにした。
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