1.CeO_2系電解質のもつ酸素ポテンシャルを広範囲で決定する方法を確立した CeO_2はSmなどの低原子価酸化物の置換固溶によって、あるいは還元雰囲気におけるCeO_2自身の還元によって酸素空孔を生ずるが、その際にラマンスペクトルにおいてCeO_2の基本振動バンドに加えて新たなバンドが観測される。これを利用して昨年度までに両バンドの面積比から酸素ポテンシャルを評価する方法を確立している。しかしながら、この方法では、酸素空孔の生成が主に置換固溶による領域(Ce_<0.8>Sm_<0.2>O_<2-δ>では1273Kにおいて約10^<-8>atm以上の酸素分圧の領域)においては酸素ポテンシャルを評価できないという問題点があった。このことは即ち燃料電池発電時の電解質において、空気側近傍での領域が評価できないことを示す。本年度、本研究ではラマンスペクトルにおける基本振動バンドの強度(正確には標準試料に対する強度比)に着目し、酸素分圧低下によってCeの平均原子価が低下するに従いラマン散乱強度が低下することに注目した。あらかじめ種々の酸素分圧下、1273Kでアニール後急冷した試料のラマンスペクトルより、両者の対数の間に0<-log[P(O_2)/atm]<20の範囲で直線関係を得、これを検量線として試料の広範囲な酸素ポテンシャルを評価することが可能となった。 2.次年度の方針 次年度はピーク面積比、並びに強度比の二つの方法を用いて空気と燃料に挟まれたCeO_2系試料内部の酸素ポテンシャル分布の評価を行う。さらに、実際の発電時において酸素ポテンシャルが電流密度によってどのように変化するかを明らかにする。
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