研究概要 |
後周期遷移金属化合物と有機ケイ素化合物との組み合わせにより,これまで多くの有用な有機合成反応が開発されている。例えば,ヒドロシランなどの有機ケイ素化合物は8,9,10族などの後周期遷移金属化合物に対する反応が知られており,これを利用してヒドロシリル化などの触媒的合成反応が数多く開発されてきた。しかし,銅(I)塩などの11族金属化合物と有機ケイ素化合物の反応例は少なく,これらを触媒とする合成反応の研究も限られていた。 我々は最近、ヒドロシランやジシランのような有機ケイ素化合物を用い、銅(I)塩を触媒とする有用な合成反応を見いだした。さらに、銅(I)塩触媒による、有機ホウ素化合物を用いた触媒反応の開発もおこなった。また,同じ11族金属化合物である金(I)錯体を用いた触媒反応の開発にも成功し,これまで極めて例の少なかった金(I)錯体による触媒反応の新しい設計指針が得られた。Si-Si結合を持つ化合物と銅(I)塩との反応:銅(I)塩によりジシランが切断されることを初めて発見し、銅(I)塩触媒を用いたジシランによるα,β-エノンの共役シリル化反応を開発した。類似の反応は、過去にPd,Ni触媒でも報告されているが、銅(I)触媒を用いたこの反応は、ジシランに対する反応活性がより高く、合成反応としての一般性に優れている。(b)Si-H結合を持つ化合物と銅(I)塩の反応:ヒドロシランと銅(I)塩がDMI中で反応することを初めて明らかにした。さらにこれを利用してα,β-不飽和カルボニル化合物の選択的1,4-還元反応を開発した。
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