我々はすでに、β-シクロデキストリン(β-CyD)の配向の制御にモレキュラーインプリント法を適用することで、コレステロールを強く認識する架橋シクロデキストリン高分子の合成に成功している。更にMALDI-TOFMSを用いた分析から、コレステロールが鋳型として存在することで、CyDの二量化が促進されることを見出した。今回は、CyDの二量化に二級水酸基と一級水酸基のどちらが関与しているかについて検討した。まず、^1H-NMRによって架橋剤のトルエンジイソシアナート(TDI)が一級水酸基と二級水酸基のどちらと優先的に反応するか調べた。その結果、鋳型分子不在下では一級水酸基と反応しやすいことが分かった。それに対して鋳型効果が顕著であったコレステロールを反応系に存在させたところ、二級水酸基が相対的に加速された。一方鋳型効果のほとんど認められないプロゲステロンを用いた場合には、この二級水酸基の反応の加速効果は見られなかった。このことから鋳型存在下での架橋反応には二級水酸基が関与していることが示唆された。この事を確認するため、1級水酸基を保護したCyDを用い、コレステロール存在下と不在下でのTDI架橋による二量化の促進を、MALDI-TOFMSで調べた。その結果、コレステロール不在下では二量化がほとんど進行しなかったのに対し、コレステロール存在下では著しい二量化の促進が見られた。以上の事実から鋳型分子が存在することで、CyDの二級水酸基側が架橋されることが明らかとなった。 更に我々は、CyDのビニルモノマーを合成し、水中で鋳型存在下でラジカル重合する手法を開発した。この手法は、疎水官能基を持つナノサイズの水溶性分子に対して適用することが可能である。本年度は、ジペプチドおよび抗生物質を認識するレセプターの合成に応用した。
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