研究概要 |
本研究の初年度にあたる平成11年は、おもにフェノール類のo位選択的アリール化について検討を行った。その結果、無置換あるいはp位置換フェノール類を、芳香族臭化物とともに、酢酸パラジウム-トリフェニルホスフィン触媒存在下、塩基として炭酸セシウムを用い、o-キシレン還流条件下で処理すると、五つのアリール-アリール結合が効率よく形成され、2-(1,1'-ビフェニル-2-イル)-6-(1,1':3',1"-タ-フェニル-2'-イル)フェノール誘導体が選択的に得られることを見い出した。本反応で得られた生成物のあるものについては、X線構造解析法により構造を決定し、結晶中ではフェノール性酵素のまわりが立体的に込み合っているにもかかわらず、興味深いことに二分子一単位でface-to-faceの形をとることが明らかになった。また本反応系を用いると、相対的に反応性に劣るとされる脂肪族C-H結合の分子間アリール化にも適用できることがわかった。すなわち2,4,6-トリメチルフェノールをブロモベンゼンとともに処理すると、2,6-ジベンジル-4-メチルフェノールが、少量の2-ベンジル-4,6-ジメチルフェノールとともに生成する。今後、このフェノール類のo位アリール化反応に関しては、光学活性ホスフィン配位子を用いるo位置換ブロモベンゼン類とのカップリングへの展開を図り、軸不斉を有するo-アリールフェノール類の簡便な合成法の確立を試みる。
|