有機フッ素化合物は、フッ素原子の特性を活かした医薬、機能性材料として、そのニーズが高いにもかかわらず、これらの合成は反応制御等の多くの問題を抱えているので、選択的フッ素化反応の新規開発は重要な研究課題である。本研究は新たに、遷移金属触媒を利用する立体選択的フルオロ化反応の開発に取り組むものである。すなわち、酸フッ化物のカルボニル基に隣接する炭素-フッ素結合をロジウム(I)錯体を用いて活性化し、不飽和化合物との反応を行うことにより、有機化合物へのフルオロ基及びアシル基の立体選択的一挙導入に照準を絞っている。これまでの研究状況を以下に示す。 (1)本立体選択的フルオロ化反応の鍵反応となる「遷移金属錯体による酸フッ化物のカルボニル基隣接炭素-フッ素結合の活性化」について系統的に調査した。基質としてフッ化ベンゾイルを用い、種々の中心金属及び配位子についての検討を積み重ねたが、目的の触媒反応を完成できるレベルの素反応開拓には至らなかった。これは、強固な炭素-フッ素結合切断には相当のエネルギーを要するため、これを緩和するだけの仕掛けが必要と考え、現在次に示す手法についての検討を行なっている。 (2)分子内に配位性置換基(窒素原子、酸素原子、あるいは炭素多重結合等)を有する酸フッ化物を設計し、触媒反応点に切断部位を近づけてることにより目的の炭素-フッ素結合切断、及び立体制御を容易にしようとした。現在、本用途に適した基質(酸フッ化物)の合成を行なっている。
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