研究概要 |
本研究は、ヒドロシリル化の一方の基質であるヒドロシランを、同時に典型金属Lewis酸としてとらえ、ケイ素を二元的に用いることで、配向性基を持つ末端アルキン類を基質とし、位置選択性制御を行うことを目的とする。 硬い酸であるケイ素への配位という観点から、配向性基として、アミノ基およびその保護体を選び、4-アミノ-1-ブチン誘導体(1)を基質の一つとした。また、生成するアルケニルシラン類が、引き続く合成中間体として用いられることを考え、最終的にアミノ基が除去できる構造も考慮し、O-プロパルギルエタノールアミン誘導体(2)も検討対象とした。触媒には、ヒドロシリル化に対して最も高い反応活性を持つ、白金(0)錯体を用いた。 基質2のN,N-ジメチル体でヒドロシリル化を行ったところ、用いるシランによって反応の状況が大きく異なった。クロロシラン類をヒドロシランとして用いると、ヒドロシリル化そのものは進行しなかったものの、反応溶液中で、ケイ素とアミノ基との相互作用が最も大きいことが、NMR測定によって観測された。一方で、電気陰性基を持たないアルキルシラン類を用いると、ヒドロシリル化は進行したものの、その位置および立体選択性は、一般の直鎖末端アルキンを基質とした場合の結果となんら変わらず、ケイ素と窒素の相互作用はほとんどないことが示唆された。したがって、アミノ基の保護基を変えて、窒素の電子密度を調整することで、ヒドロシリル化が進行する条件を見い出す必要がある。 基質2に関する以上の結果から、基質1を、より窒素上の電子密度を下げた、ベンズアミドおよびスルホンアミド構造とし、合成を検討中である。 平成12年度は、本年度の結果を受けた上記の検討内容と共に、配位サイトとしてのケイ素とヒドロシランとしてのケイ素という機能分離をした基質系についても探索を行う。
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