研究概要 |
本研究は、ヒドロシリル化の一方の基質であるヒドロシランを、同時に典型金属Lewis酸としてとらえ、ケイ素を二元的に用いることで、配向性基を持つ末端アルキン類を基質とし、ケイ素基の内部付加選択性を実現することを目的とする。 平成11年度の結果を受け、配向性基としてベンズアミドおよびスルホンアミドというアミド基を選び、まず、O-プロパルギルエタノールアミン誘導体(1)を基質とした。また、触媒には、ヒドロシリル化に対して最も高い反応活性を持つ白金(0)錯体、同様に典型的なヒドロシリル化触媒であるロジウム(I)錯体、および、内部付加選択性を発現する触媒として、筆者らがすでに見いだしている、ルテニウム(II)錯体を用いた。 基質1のヒドロシリル化を、クロロシランで行ったところ、まず収率よく反応が進行することがわかった。これは、N,N-ジメチル-O-プロパルギルエタノールアミンのヒドロシリル化が、クロロシランでは全く進行しないという、前年度の結果と対照的である。位置選択性に関しては、依然として、一般の直鎖末端アルキンを基質とした場合の結果となんら変わらなかった。 そこで、次に、アミド基の位置がよりアルキン部位にに近づいた、N-プロバルギルフタルイミド(2)を基質とした。白金(0)錯体およびロジウム(I)錯体を用いた場合、その位置選択性は、有機合成的に十分な程度ではないが、一般の直鎖末端アルキンの場合とは明らかに異なり、内部付加配向性を示した。また、ルテニウム(II)錯体では、98%という、合成的にほぼ完璧な内部付加選択性が実現できた。ケイ素上に電気陰性基を持たないトリアルキルシラン類は、ケイ素上へのアミド基の配位を受けないと考えられるが、実際反応に用いると、同様に内部付加配向性が見られる。したがって、触媒金属中心への配位が位置選択性に影響を及ぼすといえるが、いずれにせよ、アミド基が位置選択性制御に重要な役割を果たすことが示された。
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