本研究では樹状ポリ(t-ブチルアクリレート)(PTBA)薄膜の形状特異性とPTBA薄膜を用いたフォトアシッドパターニングについて検討を行った。フォトアシッドは光分解して酸を発生するため、フォトマスクを通して位置選択的に酸を発生させ、PTBA薄膜をPAA化し、その後、機能性物質を化学修飾してパターン化機能性薄膜を作製した。樹状PTBA薄膜の成長サイクル数と膜厚の関係から膜厚はサイクル数と共に指数関数的に増加した。FTIRスペクトルからも同様の結果が得られた。これらの結果は一つのカルボキシル基にPTBA鎖の末端アミン基が反応し、PTBAのt-ブチル基を脱保護化することで多数のカルボキシル基を生成することで膜が成長していることを表している。 樹状PTBA薄膜は基板上に化学的に結合しているため有機溶媒に対する耐性が高く、アミド結合を利用して様々に機能化が可能である。ここでは、フォトアシッドを利用して位置選択的な蛍光色素のパターニング及びフォトアシッドパターニングを繰り返すことで異なる蛍光色素のマルチパターニングを試みた。フォトアシッドパターニングは以下の手順で行われた。作製されたPTBA薄膜状にフォトアシッドを含むPTBA溶液をデップコートし、フォトマスクを通して光照射し、100℃でポストベイクして光照射部分のPTBA薄膜のt-ブチル基を脱保護化し、PAA薄膜に変えた。その後、カルボニル基を活性化し、アミノ末端蛍光色素を化学修飾することで蛍光色素のパターニングを行った。本操作の繰り返しにより、マルチパターニングが可能となる。そこで、蛍光色素であるエオシンとダンシル誘導体をフォトアシッドを用いてマルチパターニングしたPTBA薄膜の蛍光顕微鏡観察した結果、マルチパターニングが可能であることが実証できた。 以上、化学結合した樹状PTBA薄膜とフォトアシッドパターニングを組み合わせることで多様な機能性薄膜パターン作製が可能となった。本法はDNAチップや細胞スクリーニングなど分野への応用が期待できる。
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