HPCとトルエンを室温で混合すると、HPCを60重量%程度含有するゲルが形成され、このゲルは種々の色を示すことを昨年度報告した。しかし、このゲルは脆すぎるので、架橋剤のヘキサンジイソシアネートを0.005mol%含浸させ50℃で12時間静置したところ、10^6Pa程度の弾性率を示すしなやかなゲルになることが解った。この化学架橋反応は同条件のアセトン溶液中では進行しなかったので、物理ゲル中の凝集構造が効果的であったものと考える。また、このゲルも物理ゲルと同じく室温で青く80℃付近で赤く呈色した。しかし、このゲルは液晶性を示さなかったので、通常の液晶性官能基を有する両親媒性高分子を合成することで、目的の液晶異方性ゲルを合成することを試みた。アクリル酸とメソゲン基(シアノビフェニル基、カルボキシビフェニル基)を有するモノマーから合成された共重合体の構造をX線回折法などで解析した結果、メソゲン単位が全モノマー単位に対してわずか25%程度存在するだけで液晶相が発現された。同時に、アクリル酸が液晶の層構造秩序や等方化温度を高めることが分かった。これらのポリマーに液晶紡糸による配向処理を施し、水に浸したところハイドロゲルが自発的に形成されることが分かった。さらに、このハイドロゲルの構造をX線回折法などで調べた結果、配向度が0.8程度の異方性ゲルであることが分かり、直交偏光子下で強い複屈折性を示した。さらにこのゲルは12重量%というごく少量の水の存在下でスメクチック層構造転移を示すことも解り、水を吸収するにも関わらずその弾性率が増加することが分かった。
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